コラム

2024.03.28

“自然に勝たない”農法で育てるクレソン|フォレストファーム・代表中垣勝弘さん

道志村・村民
道志村に38年前に移住した中垣ファミリー。移住してすぐの1986年にクレソン栽培に特化したフォレストファームを創設しました。家族で試行錯誤しながらクレソンを育て続け、今では富士山を囲むように富士吉田、富士宮、裾野、道志村の4か所21圃場、およそ7000坪にも広がっています。また日本でおそらく唯一となる有機JAS認証を受けているクレソン農家でもあります。中垣さんご本人に、農薬や化学肥料に頼らない有期栽培のこだわりに加えて、かつて日本一のクレソン生産量を誇っていた道志村への想いについて伺いました
“自然に勝たない”農法で育てるクレソン|フォレストファーム・代表中垣勝弘さん
フォレストファーム・中垣夫妻

自然への憧れが道志村への移住そして“有機農法”によるクレソン栽培へとつながる

「なぜ、道志村という地への移住を選んだのでしょうか?」その理由を伺うと、「昔から自然への憧れが強くて、田舎暮らしがしたいと40年も近く前に家族と東京から程近い道志村への移住を決めました。」と中垣さんは答えます。さらに「東京での暮らしは仕事が遅く子供たちとの時間が持てずにいたんです。だから田舎なら家族みんなで食卓を囲えられると思ったんです」と移住にいたった裏話も聞かせてくれました。そんな中垣さんが道志村で選んだ生業は農業でした。それも時間も手間も労力もかかる“有機農法”によるクレソン栽培。「せっかくの田舎暮らし。自然を相手に仕事をするなら、大好きな自然にも、せっかく食べてくれる人にも優しい農法を選びたかった。」と移住当初の話をしてくれます。数ある農作物の中でも、なぜクレソンを選んだ理由を聞くと、横にいた奥さまの和子さんから「高校生の頃にステーキに添えられた一本のクレソンのかわいらしさとそのおいしさに感激したんです。この思い出がクレソン栽培のきっかけになったと思うと、人生って面白いですね!」と笑いながら答えてくれました。
自然への憧れが道志村への移住そして“有機農法”によるクレソン栽培へとつながる
富士山の麓で広がるクレソンの圃場

“自然に勝たない”農業とは“欲を出さない”農業のこと

中垣さんは農業を営み続けるのに常に念頭に置いていることがあります。それは“自然に勝たない”ということ。「私利私欲を追求して農業をすれば、農薬や除草剤に頼ってしまうでしょう。クレソンは水耕栽培だから、この地の清流や湧水という自然の恩恵を受けて育っています。除草剤を使えばそれが川に流れてしまい、自然の水に影響がでてしまう。化学肥料を使えば自然だけでなく人にも影響が出てしまう。だから、自然に勝ってはダメなんです。」と力強く語り、農業を始めてからこの軸は変わっていません。その結果として、広い圃場は有機JAS制度の厳しい基準をクリアし、おそらく日本唯一の有機認証を得ているクレソン農家だといえます。 道志村からスタートした中垣さんのクレソン栽培は、「フォレストファーム」の名のもと富士山の麓で清流を味方にしながら、“自然に勝たない”農業によって広がっていきました。“自然に勝たない”農業で作られたクレソンは、味が濃く美味しいとの評判を呼び、通販サイトの評価では「いつもありがとうございます」、「また買います」といったリピーターの声で自然とあふれています。
“自然に勝たない”農業とは“欲を出さない”農業のこと
カルガモの家族と共に有機栽培に精を出す

知れば知るほどファンになるクレソンの魅力

販売会社のイベントに参加すると、「あのクレソン農家の方ですか?」とよく声を掛けられますと、お客さんとの交流を嬉しそうに中垣さんは話してくれます。クレソンの有機栽培にこだわり続けた月日と共に、ファンも一緒に築き上げてきました。奥様の和子さんの料理好きが高じてクレソンの数々のレシピをフォレストファームのHPや冊子から発信してきました。クレソンおにぎりからライスサラダケーキにクレソンスープと、肉の付け合わせでしかないイメージに留まらず、クレソンファンを広げる一因にもなっています。最近ではSNS上で野菜ソムリエさんがフォレストファームのクレソンファンとしておススメのレシピを紹介しています。 クレソンは栄養豊富だから医者いらず。日頃薬を飲まずにいられるのもクレソンのレシピのおかげかも、と有機農法で育ったクレソンは自然にも体にも優しいことを中垣さんは体現しています。クレソンは各種ビタミン、カルシウム、カリウム、葉酸など豊富な栄養素を含み、サラダ、おひたし、和え物、鍋、炒め物などといった調理法も幅広く、隠れたスーパーフードといえます。
知れば知るほどファンになるクレソンの魅力
和子さんの考案のクレソンレシピはフォレストファームのHPでチェック

道志村が地元だからこそ、クレソンで貢献がしたい

移住してから富士山の麓で約7,000坪と広がったクレソン栽培。これからについて伺ったところ、「道志村が地元だからこそ、道志村でもっと生産量を上げたいですね。そのためには農地の整備が必要です。」と、「また、道志村といえばクレソン、ふるさと納税の返礼品としても貢献できればと思います。」と道志村への想いついて話します。クレソンは5月に小さな白い花を咲かせます。それを母の日にあわせ季節限定のクレソンブーケとして商品化して、返礼品にできないかと構想はふくらみます。他にも完全無添加のクレソンウォーターやクレソンを乾燥させたお茶など中垣さんのチャレンジは未来に続きます。移住して40年近く経ち、その歩みに色々な苦労があったかと思います。しかし、人生の大半を道志村で過ごした今、かつて日本一のクレソン生産量を誇った道志村で生態系を含めた自然環境を整え、クレソン栽培を広げられないかと強く想っています
道志村が地元だからこそ、クレソンで貢献がしたい
青い建物が目印の直売所で買えるクレソンやセリの詰め合わせ
Profile

フォレストファーム代表:中垣勝弘

大阪出身/道志村へ移住後、フォレストファームを立ち上げ、化学的な農薬、肥料に頼らない有機農法でクレソンを栽培。2007年には有機JASを取得。販売はパルシステム生協、生活クラブ生協など宅配他生活クラブデポー店舗、道志村の直売所で販売。/直売所:山梨県南都留郡道志村10319 /HP:forestfarm.ne.jp /FB:https://www.facebook.com/forestfarm10319

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