道志村の課題を自分ゴト化|地域創生WG 元ふるさと振興課・山口課長/現ふるさと振興課・金子課長
道志村役場は庁舎の建て替えが進められており、2024年に新庁舎が完成予定になっています。庁舎が新しくなるだけでなく、いま役場内でも新しい取り組みが進んでいます。道志村役場は、総務課、住民健康課、産業振興課、ふるさと振興課、そして教育委員会で構成され、職員数は34名ほどの自治体となります。比較的規模の小さな自治体ではあるにも関わらず、部署間の横のつながりが薄いことが懸念されていました。ただ、昨年から村の課題に取り組む「地域創生ワーキンググループ」が発足し、部門の垣根を超えた横断的な事業の立案に取り組み始めました。この地域創生ワーキンググループについて、立ち上げ当時のふるさと振興課の山口課長と現在の課長である金子課長から話を聞いてみました。
村の課題はみんなの課題
―――2023年10月から立ち上げた、「地域創生グループワーキング」の立ち上げの目的は何でしょうか?
山口課長)小さい自治体ではあるのですが、意外にも役場内の部署間での横のつながりなく、縦割りの組織でありました。それを解消しなければならいと、みんなで村の課題から解決までを考えようと「地域創生ワーキンググループ」がスタートしました。
金子課長)これまではそれぞれ課が担当する範囲で事業案を考えていましたが。それを「地域創生グループワーキング」では職員みんなで村全体の課題について考え、解決策まで提案するといういままでになかった取り組みになります。
―――役場全体での取り組みは何をきっかけにスタートしたのでしょうか?
山口課長)山梨県の各市町村の職員が集まる研修に参加してきた職員の声がきっかけです。その研修のプログラムでは、地域創生の課題を参加者で議論して、解決策である事業案までまとめるといったものでした。ふるさと振興課から2名の職員がそこに参加し、大変刺激を受けて帰ってきました。参加した職員からは、「道志村もこのままではいけない。村の課題はみんなの課題、だからこそ、役場でも同じような議論をする場をつくるべきだ」という声が上がりました。その声を真剣に受け止めて、「地域創生ワーキンググループ」がスタートしました。
金子課長)これまでの部署毎の取り組みから役場全体での取り組みという初めての取り組みで、職員のみんなには戸惑いがあったかと思います。ただ、私はやってよかったと思います。役場に所属する職員全員が、自分達の村の課題を考えて、解決策となる事業案をまとめるという過程が職員に変化をもたらしたからです。職員たちの取り組みへの気持ちの変化も感じられるようになりました。
自ら考えた事業を推し進める楽しさ
―――部門を超えた議論からどのような課題が出てきたのでしょうか?
金子課長)村の課題ばかりを挙げるのではなく、自分たちの村の状況を振り返るためにSWOT分析という手法を使って、村の強みや弱み、機会や脅威を把握しながら課題を議論してきました。
山口課長)村の課題としては人口減少、少子高齢化はもちろんですが、IT機器を使いこなせないリテラシーの問題や移住者が増えない問題、役場の業務の効率性における課題など多岐にわたるものがあがりました。
金子課長)最初の頃は、普段の業務も忙しい中で参加だったため、職員も大変だったかもしれません。しかし、そこはやはり自分達の村を何とかしたという気持ちが強い職員たち、すぐに村について議論することが楽しくなっていきました。全員がそろうことはさすがに難しかったですが、参加率が良かったのはその意識の現れではないかと思います。
―――「地域創生ワーキンググループ」を進むにつれ、他にどんな変化があったのでしょうか?
山口課長)いままでは担当する職員が考えられた範囲のみで事業案を進めるだけでした。ただ、ワーキンググループの取り組みが進む中で、自分で考えことに対して他の部署のいろいろな方から意見をもらえるようになりました。ある意味一人よがりの部分もあった事業案をみんなでブラッシュアップしていく過程で、よりよい事業案になっています。
金子課長)現在はワーキンググループから出てきた事業を進めており、自分たちで考えた事業なので力も入り、やらされている感や意見を言えない雰囲気などがなくなってきたと思います。まさに「村の事業=自分ゴト化」が進んだと思います。
山口課長)アンケートからも職員の意識の変化が見えます。回答してくれた職員の86%が満足と回答し、「年齢や担当課を超えた職員間の交流ができて、さまざまな価値観に触れられた」、「村の今後や地方創生について考える良い機会になった」、「担当の枠を超えた事業について提案をできるよい機会だった」など多くのポジティブな意見も聞かれました。
2024年度に向け二つの事業案を推進中
―――「地域創生ワーキンググループ」を通じて現在どんな事業を進めているのでしょうか?
金子課長)いまは、2つの事業案を推し進めています。一つは、買いものをする場の環境整備、二つ目は子育て支援の充実です。買いものをする場の環境整備については、跡継ぎの問題で村内にある商店の閉店が進む中で、小売店舗に出店してもらう計画を進めています。
山口課長)子育て支援では、まずはそれぞれの課で進めていた子育て支援のサービスを、一つのパッケージ化にまとめる予定です。この「地域創生ワーキンググループ」をきっかけとして、縦割りに取り組んでいた子育て支援も組織を横断したパッケージとして、利用しやすい形を目指しています。それに加えて、道志村にしかできない、独自の子育て支援も考えています。 金子課長)まだ、あまり多くは話せない部分もありますが、道志村について職員みんなで考えて立案した事業案なので、楽しく夢がある仕事と思っています。
―――楽しみですね、役場が変われば、村も変わるみたいな化学反応が起きることが期待します。
今後の地域創生グループワーキングは?
―――初の試みの「地域創生グループワーキング」から、今後はどんな展開をしていきますか?
山口課長)今回推し進めている2つの事業は、村の総合戦略にも取り入れて、評価をしていきます。実行して終わりでなく、評価をして、さらに事業を継続して育てていきたいです。また、新たな事業案や既存の事業の変革にも地域創生ワーキンググループを活用していきたいです。ワーキンググループでの取り組み範囲が広がることで、さらに職員にも張り合いが出てくると思います。
金子課長)職員自らが検討して事業化する流れをつくりたいです。ワーキンググループもはじめてなこともあり戸惑いはありましたが、自分達が主体的に動くことで楽しくなりました。新しいことを独りではなかなか立ち上げられないので、みんなで検討する機会を設けることで、みんなでならやれると思えるようにしたいです。また、例えば子育て支援のような事業もせっかく進めても外に発信できなければ意味がないです。道志村で取り組む新しい事業を山梨県だけでなく東京や近郊の県にいかに情報を発信できるか?道志村はその点弱いので次の課題でもあります。